喘息患者へのヨード造影剤の使用は注意が必要!

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薬のこと

こんばんは、病院薬剤師のポテPです。
子供の寝かし付けで連日寝落ちしてしまい、夜に何もできない日が続いていました。さっさと寝てくれると助かるのですが難しいですね・・・。

さて、本日は造影剤(特にヨード造影剤)の話です。「ヨード造影剤で注意すること」と言えば、真っ先にヨード造影剤使用時のメトホルミン休薬をあげる薬剤師がほとんどかと思います。実はそれ以外にも喘息患者でも注意が必要であることはご存知でしょうか?喘息患者は一般的に小児15%以上、成人5-10%程度と言われており、かなり身近でありふれた疾患です。今回はそんな喘息患者への造影剤使用時の注意についての内容です。※ガドリニウム造影剤に関しては触れません※

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「原則禁忌」とは ※今後は廃止

ヨード造影剤の添付文書を見たことはあるでしょうか?そこには以下のような記載があります。

原則禁忌:気管支喘息の患者 [副作用の発生頻度が高いとの報告がある。]

これが今回伝えたいことのほぼ全てなんですが、喘息患者へヨード造影剤を使用すると副作用が発現しやすいことが報告されております。アレルギー歴無しの群と比較すると、そのオッズ比は10.08と非常に高いのです。

原則禁忌とは「次の患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること」とされています。つまり、薬剤を投与するリスクを上回る臨床上のメリットが期待される場合はその使用が認められる、ということです。
※なお、2019年4月1日より医療用医薬品添付文書の新記載要領が施行され、原則禁忌が廃止となりました。5年間の経過措置が設けられているため、いずれは気管支喘息の患者への投与は「特定の背景を有する患者に関する注意」に移行すると(勝手に)予想しています。

実際はどうしているか

喘息患者では10倍もヨード造影剤使用による副作用の発現頻度が高いと言われております。そのため海外のガイドライン(RCR:The RoyalCollege of Radiologists)では、
●喘息がコントロールされているかどうか、COPDではないか。
●コントロールがされていない場合は緊急でなければ検査を延期。
●コントロールされている場合、造影検査のメリットを再度検討する。
●その上でどうしても造影検査が必要であれば、
 ・非イオン性低浸透圧造影剤や等浸透圧造影剤を使用する。
 ・患者管理を常に行う。
 ・造影検査後30分は患者を観察する。
 ・副作用が起きた場合、すぐに対応できるよう薬剤等の準備をしておく。

ざっくりですが、こんなことに注意するよう書かれています。実際には、造影剤投与前にステロイドの点滴を行ってから検査を行うことが多く、勤務先でもそのように実施されております。

なので、僕はいつも造影検査をする患者さんが喘息の既往を持っていた場合、
①直近で喘息発作は起きていないか
②ステロイドの点滴オーダーは入っているか
③そもそも医師は喘息の既往を把握しているか

の3点は欠かさず確認するようにし、不備があれば必ず医師に報告・確認することを心がけています。(喘息既往があるにもかかわらずステロイドの前投与がオーダーされていない症例で、ステロイドのオーダーを依頼したことも実際にあります。)また、患者さんには(喘息の既往有る無しに関わらず)検査後に体調不良あればすぐ申し出るよう説明しています。

 

「造影検査」と聞くとどうしてもメトホルミンの休薬ばかり気にしがちですが、薬剤安全使用の観点からは喘息の既往やコントロール状況も非常に重要なチェック項目です。薬剤師として関わる機会があれば、ぜひ意識してみて下さい。

以上です。

参考:Board of the Faculty of Clinical Radiology The RoyalCollege of Radiologists:Standards for iodinated intravascularcontrast agent administration to adult patients.

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