こんばんは、病院薬剤師のポテPです。
本日の話題ですが、病棟で勤務する薬剤師であれば間違いなく遭遇するであろう「持参薬を院内採用薬に切り替える際、どの薬剤を選択するか」という問題について私見全開で触れてみます。ちなみに僕は「だいたい」派です。「だいがえ」派とどっちが多いんでしょう?まぁ意味が伝わればどっちでもいいですね!
さて、世の中には同効薬が多数存在します。しかし病院は全ての薬剤を採用できるはずもなく、薬事審議会を通して必要な薬剤を検討し、採用しています。そのため、持参薬の残数が少ない患者さんの場合、どうしても他院の処方薬を院内採用薬に切り替えなければならない事態がよく発生します。
入院中に他院で薬剤を処方してもらうことは大半の病院で禁止されていると思います。他院での診療費用を入院している病院で算出しなくてはならないルールだからです。他院の薬剤費を入院中の病院が負担することとなり、経営観点から損失が発生してしまうのです。
僕だったらこのように代替薬を選択する、というのを紹介していきます。
同効薬であること
・・・当たり前ですね。ただし、例えば降圧剤なら何でもよい、というわけではなく、CaブロッカーならCaブロッカーから選択、ARBならARBから選択、としています。後述しますが、例外はあります。
薬物動態の類似性
Caブロッカーを選んだ!でも4種類も院内採用品がある・・・。となった時に(大体そうなると思いますが・・・)考える点です。例えば、持参薬が肝臓代謝の薬剤であれば肝臓代謝の薬剤を選択。他にも代謝酵素の関与が極力似た薬剤であったり、血中濃度の推移が似ている薬剤を選択します。
【具体例】
トラゼンタ(持参薬) → テネリア(院内採用薬)
DPP4阻害薬の中で、上記2剤は腎機能に応じた投与量調節が不要な薬剤です。この2剤のどちらかが処方されている患者さんの多くは腎機能が低下していることが予想されます。そのためトラゼンタと同じく腎機能に影響を受けないテネリアが代替薬として妥当と考えます。
血中濃度の推移が似ているかどうかの判断は、半減期やTmaxといった動態パラメータを参考にします。
投与量の設定
ここで悩まれる薬剤師をたくさん見てきました。同僚にも大勢います。正直先述した2つに関しては無意識にできていると思いますが、投与量の提案でつまずく薬剤師が多い印象です。
例えば、持参はスターシス(ナテグリニド)90mgだからグルファスト(ミチグリニド)に切り替えたいけど投与量はどうしたら・・・。
こんな時、僕が参考にしている指標を紹介します。
それはずばり、「薬価」です。薬価がどのように付けられているかは大学で習ったと思います。類似薬効比較方式(I、II)とかあの辺ですね。もう忘れましたが。すっごくざっくり説明すると、大半の医薬品は「同じような効果が期待できる薬剤同士は同じような薬価になっている」のです。
先の例だと、こんな感じです。
スターシス90mg 薬価:37.4円/錠
グルファスト10mg 薬価:37.4円/錠
※2020年9月30日現在
たまたま薬価が同じでしたが、スターシス90mgはグルファスト10mgとだいたい同じ血糖降下作用が期待できる、とみなせます。このようにして代替薬の投与量を医師に提案します。
さらに一歩踏み込んだ提案を
これまでで十分代替薬の選択はできるかと思いますが、更に一歩踏み込んだ提案として次のようなことも考えてみて下さい。
①患者状態に合わせ、薬効分類の変更を提案してみる
例えば、院内採用の無いCaブロッカーを持参された患者さんの腎機能がかなり低下している場合、腎保護作用を期待してARBへの切り替えも検討すべきではないでしょうか。1つ目に述べた例外がこれに該当します。
②いっそ休薬、中止を提案してみる
昨今、ポリファーマシーが問題となっています。持参薬を確認すると、「これ本当に必要なのか?」「何で飲んでるの?」「おいおい、胃薬4個も飲んでるよ・・・」なんて場面はかなりあると思います。そんな時は思い切って医師に休薬や中止を提案してみてもよいと思います。提案の結果、減薬することができれば場合によっては薬剤総合評価調整加算(http://www.jshp.or.jp/cont/20/0305-5-0.pdf)が最大で250点算定できるため、病院経営にも貢献できます。
時には専門医への相談をすすめる
あの手この手で代替薬を選択し、医師に提案するよう心がけていますが、あえて提案を避けることも大切だと考えます。それは自分の知識が追いつかない領域だと判断した場合です。
例えばですが僕は、精神科領域での薬剤提案や検査結果を踏まえた投与量の設定が必要な薬剤提案はしないようにしています。それは自分に知識が無く提案ができないからです。精神科領域の薬剤を安易に変更すると精神状態の悪化や有害事象の出現が懸念されます。なのでこういった場合は必ず「代替薬に関して安易な提案ができないため、専門医への相談をご検討ください」と医師に伝えています。
持論ですが、自分の力量が及ばない領域で無責任な介入をすることは患者さんにとって不利益にしかなり得ないと思っています。命を預かる場面では、分からないことは「こういう理由で分からない、判断ができない」とはっきり言うべきでしょう。(分からん分からんだけでは進歩しないので勉強は必要ですね。)
提案しっ放しにしない!
最後になりますが、自分で提案し、介入した案件は必ずフォローアップをすることです!薬剤師として非常に大切なことだと僕は考えます。ここまで様々な代替薬の選択・提案の方法を述べてきましたが、その結果患者さんに有害事象が生じていないかを確認しましょう。降圧薬の変更であれば血圧の推移を、投薬が中止となったのであれば落ち着いていた症状が増悪していないかを確認します。
以上、好き勝手に私見を述べました。薬価ベースで投与量を考えるやり方は1つの手法として参考にして頂ければ幸いです。
以上です。
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