偽性高カリウム血症を疑う

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こんばんは、現役病院薬剤師のポテPです。

偽性高カリウム血症って知っていますか?以前僕は病棟でこんな事例を経験したので紹介します。

研修医「ポテPさん、○○さんカリウムめっちゃ高いからアーガメイトゼリー※出しときました!病棟に届き次第すぐ飲ませてください!」※血中カリウムを低下させる薬

僕「わかりました!」
僕「どれどれ・・・、おぉ本当に高いな。でも何でこんなにカリウム上がってるんだ?別に腎臓は悪くないし、カリウムを貯留しやすい薬剤は使ってないし・・・。あ!これは!!」
僕「先生、偽性高カリウム血症かもしれないです。へパリン採血は不要ですか?」
研修医「へ、何それ??」

へパリン採血の結果、血中カリウム値は正常だったためアーガメイトゼリーは処方削除となりました。一体何があったのでしょう。解説します。(ちなみにマジの実話です。)

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偽性高カリウム血症とは

先の研修医と僕のやり取りにある通り、腎障害や薬剤の影響といった相応の理由が無いにもかかわらず血中カリウム値が異常上昇した状態のことです。その原因は①人為的手技によるものと②血液成分の異常によるものとに大別されます。

①人為的手技によるもの
強い陰圧をかけて(要は無理やり)採血を行うと採血中に溶血を起こしてしまい、細胞内からカリウムが放出され血中カリウム値が上昇します。他にも駆血帯を強く巻きすぎたり、細い静脈から時間をかけて採血した場合も同様の現象が起こります。カリウムは細胞内に多くあるため、溶血検体では偽性高カリウム血症に要注意です。

②血液成分の異常
血小板血症が代表的です。血小板が高値の場合、採血管内で血液が凝固する際に血小板が崩壊し細胞外へカリウムが放出することで血中カリウム値が上昇します。血小板が60万/µL以上の場合、その頻度が増加することが報告されています。

①、②いずれの場合もへパリン採血することで血漿の電解質測定ができるため偽性高カリウム血症の鑑別が可能となります。
今回のケースは②でした。採血結果を確認したところ血小板数がかなり高かったため、積極的に偽性高カリウム血症を疑うことができました。また、処方医が研修医だったこともあり、経験が無かったのだと思います。

ぶっちゃけてしまうと、以前たまたま血液内科の患者さんで同じような症例を経験したことがあったため適切に対応ができただけでした。偽性高カリウム血症という病態を知らなければ、指示通りアーガメイトゼリーを患者さんに服薬させていたと思います。

「飲みにくかったら冷やすと飲みやすくなりますよ~。青リンゴ味のフレーバーもありますからね~。」・・・こんな当たり障りのない服薬指導をして満足していたかもしれません・・・。

薬剤師は処方の妥当性を判断しなければなりません。高カリウム血症治療薬が処方されたら偽性高カリウム血症を疑ってみよう、という話でした。

以上です。

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