エリルの投与速度を遵守しよう

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薬のこと

こんばんは、ポテPです。しばらくは自分が業務を通じて得た知識を毎日ブログにすることを目標にしてます。

さて、タイトルのエリルですが、くも膜下出血後のスパズム期に用いる薬剤です。生涯にわたって縁の無い薬剤師もそれなりにいる薬剤かと思います。僕は脳神経外科病棟で勤務しているため連日のようにエリルの注射オーダーをみるのですが、必ず投与速度が遵守されているか確認するようにしています。
エリルは1回約30分かけて投与することが添付文書に記載されていますが、その理由までは記載されていません。結論から書きます。遵守が必要な理由は以下の2点です。

①30分より遅く投与した場合:有効血中濃度域まで薬剤濃度が上昇しない
②30分より速く投与した場合:血圧低下を生じる恐れがある

上記はメーカー担当者に確認した際の回答ですが、その理由を自分なりに解釈してみました。参考までにどうぞ。

①30分より遅く投与した場合
つまりゆっくり投与した場合です。インタビューフォームに臨床試験時のデータが掲載されていますが、いずれも30分かけて投与した際のデータで有効性・安全性を確認して承認を得ています。半減期が16分ほどであることを考慮すれば、それなりの速度で投与しないと有効血中濃度まで濃度が上昇しきらないことが推察されます。

②30分より速く投与した場合
エリルは投与中の血圧低下に注意が必要な薬剤です。これは血中濃度が高くなりすぎることで血圧低下が出現しやすくなるためだと思われます。実際、腎機能障害患者では血圧低下を生じやすいため減量が推奨されております。これはエリルの排泄遅延が生じ、血中濃度が上昇しやすいことが原因のようです。

特に②の血圧低下ですが、スパズム期は厳格な血圧管理が要求されます。従ってエリルの投与速度が不適切だったため血圧指示を逸脱してしまった、なんてことは絶対に避けなければなりません。そのためエリルの投与速度に関しては注射オーダー監査時に見落とさないよう心がけています。

ただ、実際よく目にするのは抗菌薬のように1回60分といった①のオーダーなので、エリルの不適切なオーダーで血圧管理に問題が生じるような事態にはあまり遭遇しません。それでも薬剤の適正使用推進が我々薬剤師の使命なので、適切な投与速度で指示されているかの確認は怠らないようにする必要がありますね。

勤務先の脳神経外科医にエリルの投与速度の話をしたところ、「知らなかった・・・」とおっしゃる医師が大半でした(それもどうかと思いますが・・・)。スパズム期の投薬はほぼ型通り行われます。その際いわゆる「医師セット」を用いてオーダーする医師が大半ではないでしょうか。しかもそのセットは代々引き継がれていく・・・。なので投与速度に関してはあまり意識されていなかったのだと思います。

以上です。

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